webページ制作ソフトウェア・ブログ・各種 SNS の時代に HTML の基礎技術を学ぶのは?

「ホームページビルダー」「Dreamweaver(ドリームウィーバー)」などの web 制作支援ソフトウェアを使うと、あたかもワープロのように、自由にページをデザインできるように見えます。しかし、使っていくとすぐ分かりますが、自由なようでなんだかうまくいかない、勝手に変わってしまう、などの現象に出会います。これはなぜでしょうか。

これは、もともと web ページは完全に自由にデザインできるものではなく、HTML (とCSS)でできることの範囲内でのみ自由にページを組み立てるものなのです。本来のコンセプトでは、HTML の機能は非常にシンプルで、ページの見た目にはこだわらないものでした。しかし歴史的な経緯で「見た目」が重視され、一時期は、建て増し的に「見た目を整える」仕様拡張がなされたのです。でもこれはまるで、木造平屋の建物を建てるつもりの土台に、後から鉄筋コンクリート 10 階建てのビルを建てているようなものです。「Web で自由なデザインをする」ことは本質的に「かなり無理なことをしようとしている」のです。そのため、あるところでは自由にできるのに、別な箇所ではうまくいかない、ということが起こります。これは、HTML のもともとのおおざっぱな機能の限界に(たまたま)あたってしまった、のです。

その後、後述するスタイルシート(CSS)が導入され、「見た目」の部分は CSS の担当として HTML から分離され、HTML 自身は文書構造のみを表す簡潔なものに戻りました。しかし、今度は「見た目」の自由度は CSS の能力や概念の範囲内となり、問題の場所が移動しただけです。ただし CSS は後発のため、以前の建て増し旅館的なものよりは大幅に整理されてわかりやすいものとなりました。トリッキーな記述方法も少なくなりました。ブラウザの多くも CSS の新しい版に正確に準拠するようになり、混乱は少なくなりました。

「ホームページビルダー」「Dreamweaver(ドリームウィーバー)」などの web 制作支援ソフトウェアでは、わかりやすさを実現するために、あたかも「見えるとおりにできあがる (WYSIWYG)」かのような画面を用意して、その画面上で視覚的に編集します。しかし内部ではその画面は HTML で記述され、HTML で保存されます。ですから、画面上で起こることは HTML でできることだけ、なのです。よりきれいな、上手な web ページを作ろうとしたら、HTML の知識が必要になります。

また、各種ブログのサービスも盛んです。ブログのソフトウェアとしては MovableType や WordPress などが有名です。出来合いのデザインをそのまま選んでブログを書く分には、HTML や CSS の知識は要りません。しかしあれこれとカスタマイズしようとすると、すぐに CSS や HTML、さらにはそのブログソフトウェアが記述されているプログラミング言語の知識が必要になります。

近年では、さらに簡単に利用できる各種 SNS が世界的に使われています。これらは web ブラウザからも利用でき、あたかも web ページのように機能するものもあります。これらの利用には HTML や CSS の知識は必要ありません。これからも隆盛していくことでしょう。ただ少し気になることは、これらの SNS サービスは「特定の単独営利企業」によって提供されていることです。営利企業がよくないというわけではありませんが、市場の変化などにより、その企業の方針が突然変化して、私たちの意に添わない方向に進んでいくことも考えられます。また SNS によっては、過去の投稿データをすべて取り出すことが困難と思われるものもあります。提供企業が私たちに合わなくなったら、乗り換える必要があるかもしれません。HTML や CSS の知識をある程度もち、自分のデータを自分ですべて持っていれば、乗り換えもかなり自由でしょう。